旅は道連れ マリコとともに

どこでも一人で行っちゃうよー あ、一人じゃなかった。マリコと一緒だ。

あたしのカーナビは 自分のことを【マリコ】と言う。
目的地を設定し 案内開始すると…
マリコが ご案内しまぁす」と愛嬌たっぷりに言うのだ。 
マリコ 頼んだぜっ」と なぜか男前な彼氏キャラの あたしとマリコ旅が始まる。

マリコは だいたい機嫌よく道案内をしてくれるのだが…少しばかり知っている道だからと 案内ルートから外れたりしたら いきなり人が変わる。
「ルート変更っ」と真顔で(たぶん)吐き捨てる。 そんなことを何度か繰り返すうちに マリコは黙り込んでしまう。 「マリコ〜 ヘソまげるなよ〜」 情けない彼氏キャラで マリコの御機嫌をとりながらの道中は なかなか楽しい。

1ヶ月位前の休日…朝 シャワーを浴びながら 「そうだ!岩手に行こう!」と思い立ち 高速道路を4時間半…マリコの世話にならずに 平泉の金色堂を見に行った。 
帰りは一般道にしよう!と思い マリコに相談すると 帰り着くまでに 13時間かかるらしい…時刻は夕方5時…ま、行けるっしょって感じで 国道4号線を南下する。 平日の夕方だったぁ…
帰宅ラッシュに巻き込まれるが 「仙台は 都会やねぇ マリコ」 
マリコは だいぶ前に「しばらく道なりです」と言ったきり黙ったままだ。淋しいなぁ…
ま、このまま4号線を行って〜 栃木県小山市国道50号線に乗り換えて〜
ちゃんと道 知ってるんだよね〜
途中 眠気と戦いながら…真夜中の1時頃 やっとこさ栃木県内に…小山市は まだ遠いなぁ…なんて思っていたら 突然マリコが叫んだ 「次の信号を左折です」•••「え? えーっ?」
「まもなく左折です」 「この信号を左折です」…マリコ 追い込んでくるわ。 「マリコが言うなら 曲がってみるか〜」 あたしは すべてをマリコに託した。 見たこともない山道を1人で走る…すでに丑三つ時とやらか?
マリコは何も喋らない。
…しばらく行って ふと気が付いた
「これって日光の山 登ってない?」
だって今 右手に見えたの 日光駅だし…日光社寺方面直進って標識あったし…マリコォォォ!  
「あたしは 家に帰りたいんだよ〜」
マリコ〜 正気に戻れ〜 狐にばかされたか〜」
大騒ぎしながら日光の町中を通り過ぎると 「次の信号を左折です」とマリコが呟いた。 見覚えのある赤い橋。
あぁそうか…マリコは あたしに近道をさせてくれてるのか…日光から足尾を抜ければ 確かに近道だ。
だが マリコ…今は真夜中だ。しかも雨まで降ってきた。 延々と真っ暗な山道を行くのは…なんだぁ…そのぉ…つまり かなり怖いぞ!
だが ここで引き返したらマリコは きっと不機嫌になるだろう…行くしかない。
…突然 道路脇から現れたシカに「ワーッ ワーッ シカーッ!」と叫び…
急に出てきた霧に怯え…
真っ暗な 草木ダムを極力見ないようにしながら…最後には「マリコのバカぁ」と呟きながら…
なんとか 明るくなる頃に家に帰りましたとさ。
ヘトヘトに疲れたけど…結局 なんか すごーく面白かったから…
マリコ…次は どこ行く?